北海道2004

【もくじ】
7/16>和歌山~舞鶴フェリーターミナル
7/17>小樽フェリーターミナル~魚松旅館
7/18>魚松旅館~積丹半島~神威岬~ニセコパノラマライン~神仙沼~細川たかし記念館~ニセコツーリストホーム
7/19>ニセコツーリストホーム~目名峠~五稜郭公園~立待岬~函館山~ライダーハウス「ライムライト」
7/20>ライムライト~大沼公園~オロフレ峠~ライダーハウス「呉竹荘」
7/21>呉竹荘~地球岬~昭和新山~有珠山~中山峠~定山渓~羊蹄ふきだし湧水~ニセコツーリストホーム
7/22>ニセコツーリストホーム~支笏湖~大通公園~毛無峠~小樽運河~小樽フェリーターミナル
7/23>舞鶴フェリーターミナル~和歌山

 北海道。昨年は道央から道北へ、そして、今年は道南へ。どこを走っても楽しくて悔いのない、広くて大きい北の大地。青く澄んだ夏空と長い直線道路の向こうには、たくさんの感動と、多くの旅人との出会いが待っていることでしょう。

ALBUM

(道南方面)
2004年7月16日~23日


2004年7月16日(金)晴れ時々くもり
 今年の夏も北海道ツーリングに行くと、昨年の北海道ツーリングが終わってすぐに心に決めていました。今年も昨年同様に、舞鶴発小樽行きフェリーを2ヶ月前から予約し、この日の来るのを指折り数えて待ちました。昨年はクラブの仲間と2人で行ったのですが、都合で行けなくなったため、今年はソロツーリングです。

今年の夏も北海道ツーリングに行く

 複数でのツーリングは、道中のアクシデント等にも心強いのですが、ソロの場合は、特にパンクが心配でした。そのため、事前に「B.S.N」(クラブ店)にてパンクの修理方法について特訓を受け、どうにか習得して自信がつきました。パンク以外はどうにかなるだろう…と。また、宿泊はライダーハウスを利用することで、荷物も最小限に止めました。

 新日本海フェリーの舞鶴~小樽航路に、今年の7月から超高速フェリーが就航し、昨年まで約30時間かかっていたのが、20時間となって1/3も短縮されました。しかし、旅人にはあまり嬉しくありません。なぜなら、小樽港到着時刻が午後8時30分と遅いため、フェリーターミナル周辺で事前に宿の予約が必要となるからです。これなら、昨年までのように船内でもう一泊させてもらい、明朝早くに(昨年までは午前4時着)着く方が宿泊代が余分にかからず有難いように思うのですが…。

 ゆとりを持って到着すべく午後4時30分に自宅を出ました。天気は良いのですが、今年の夏は例年になく特別に暑くて気温は34℃もあり、ウインドブレーカータイプのブルゾンと革のライダーパンツでは、中にメッシュを着ていても汗びっしょりになり、道内の気温?に合わせての和歌山からの出発はサウナ地獄です。

 高速道路を飛ばしても、この暑さは和らいではくれません。日が落ちてくれれば少しは涼しくなるのだろうか…そう思いながら暑さに耐えることおよそ2時間。舞鶴若狭自動車道は綾部PAを過ぎた辺りからのことです。

 突然黒い雲とともに目の前に綺麗な?雷光。ほぼ同時に、ヘルメットを被っていても耳をつんざくほどの激しい雷鳴。バケツの水をぶっちゃけられるような豪雨には、レインウェアを羽織る余裕もありませんでした。

 そんな中を、全身ずぶ濡れになりながら必死で駆け抜け、舞鶴到着は午後7時30分でした。舞鶴東ICを降りたころには治まりましたが、暑さどころか、冷や汗が沸いて出るほどの怖い思いで、生きた心地がしませんでした。

 あの時の雷光と雷鳴は、今でも胸に焼き付いて離れません。昔からの怖いものの例えに「地震、雷、火事、親父」と言いますが、親父の怖さ以外は、今も昔も変わることはなさそうですね。

 フェリーターミナルに到着後すぐに乗船手続きを済ませ、2階の待合所で乗船時間を待ちながらブーツを脱いで乾かせましたが、あまりの濡れの激しさで、この場で乾くことなどありません。途中のマイク案内では、バイクの乗船は午後10時30分頃になるとのこと。それまでの3時間をテレビを観て過ごしました。

 午後10時20分、バイクの乗船案内がありました。早くから乗船駐車場所に停めていた私は、5~6台目の乗船でした。予約した客室は、昨年同様「2等寝台」です。2段ベッドが8セット、計16名で1室となっています。就航したての船内は非常に綺麗で、とっても気持ちが良かったです。この日のフェリーは「はまなす」という名前です。夕立で濡れた下着を着替えるべく、混まないうちにいち早く大浴場へと向かいました。

この日のフェリーは「はまなす」という名前です。

 午後11時30分。舞鶴港からの出港時間は翌日17日の午前0時30分です。とても出航時刻まで無理です。午前5時起床が習慣になっている私の目は、ベッドに横になると同時に眠ってしまいます。

本日の走行距離:228.7km
本日の燃料補給:23.62ℓ


2004年7月17日(土)くもり
 5時起床、横のデッキへは強風のため出られません。まだ就航したてのこの超高速フェリー。どんなスピードかと後ろのオープンデッキに出てみました。

 やはりスピードはかなり速く感じます。揺れはほとんど無いものの、ベッドに横になっていると小さい振動が伝わってきます。スピード化が図られたための波を蹴散らすかのような微振動です。

超高速フェリーは静かな航行を続けています。

 佐渡沖通過の際には、残り梅雨の激しい雨が振りました。先日来この梅雨の豪雨で、新潟地方は大変な被害がでましたが、海の上の超高速フェリーは、そんな豪雨もものともせず静かな航行を続けています。

 フェリー内のレストランの朝食は、午前8時から9時までです。毎日午前6時の朝食が習慣の私には、お腹が空いて耐えられません。何も買い込んでこなかったため、止むを得ず自動販売機の焼飯で済ませました。

 今年から船内レストランはバイキングとなっており、朝食1,200円、昼食1,500円、夕食1,800円です。少食の私には、バイキングは不向きです。フェリー内での食事はやはり割高なため、復路はコンビニで3食分を買い込んで乗船することに決めました。

 特に何もすることがない船内での時間の経過はとても遅く感じます。昼間の時間を狭い2段ベッドでじっと横になって過ごすのは、かなり辛いものがありますので、軽食喫茶の空いたテーブルでテレビを観て、小樽港までの1日を過ごしました。今日の夜が来れば小樽に着くのかと思うと、やはり超高速フェリーの速さを感じます。

 夕食を済ませ、案内所そばの現在位置を映し出すスクリーンを見ると、フェリーはもう小樽港に入港間近です。オープンデッキに出てみると、小樽港の近づくのが見えます。フェリー「はまなす」は、予定通り午後8時30分に小樽港に着きました。

 今夜は、昨年も利用させていただいた小樽港近くの「魚松旅館」への宿泊です。同じバイクツーリングの方が、ほぼ同時に魚松旅館への到着です。その方は、明朝早く発つ予定とのことで、素泊まりでした。早速入浴を済ませたかと思ったら、隣の部屋はすぐに静かになりました。私もいつもどおり午後10時に着床しました。

本日の走行距離:1.80km
本日の燃料補給:0ℓ


2004年7月18日(日)晴れ
 早朝の午前4時30分、小樽の朝は小雨がぱらついています。窓から見る町の景色もどんよりとして、朝日の昇る気配すら見えません。テレビをかけて気象ニュースを見ると、午前中は雨の残るところがあるが、午後からは晴れ間が広がるとのこと。やはりここは北海道。和歌山と比較するとさわやかです。が、昨年と比べると少し蒸し暑さが感じます。東北地方に残る梅雨の影響もあるのでしょうか。

 そんな、まだ道も乾いていない中、一緒に泊まったバイクツーリングの方が早朝6時30分の出発です。道北方面へ向かうとのこと。バイクは、ホンダCB1300でキャンプツーリングの荷物です。ふと見ると同じ和歌山ナンバーじゃないですか。「ええっ…!和歌山から?どの辺ですか?」と聞いてみると、田辺とのことでした。お互いの旅の安全を祈りつつ、短時間の会話を交わして別れました。

 道内の今日のハイライトは、ニセコパノラマラインです。午後からの晴れる予報を期待して、ワクワクする気持ちを抑えつつ、朝食をいただき出発の準備をする私でした。外では、宿泊客を待ちながら自車の掃除をしているタクシーの運転手さん曰く、ニセコパノラマラインへ行く話しをすると、今日はガスがかかって良くないかも知れないとのことでした。また、寒いかも知れないとも…。

今年の北海道ツーリングの始まりです。

 午前8時、さぁ今年の北海道ツーリングの始まりです。まずは積丹半島へと国道5号線を西へ向かい、229号線に入ります。積丹半島は、フェリーからも険しい断崖絶壁が見える奇岩の多い場所です。海岸線のあちこちには、日本海の荒波で侵食の激しい今にも倒れそうな奇岩がたくさん見られます。

 積丹岬をしばらく行くと、神威岬があります。駐車場にバイクを止めて歩くこと約20分。蒸し暑くて、歩くのが少し辛かったのですが、岬の先端まで行くと奇岩が点在する珍しい眺望に出会えます。がんばって歩いた甲斐がありました。

駐車場にバイクを止めて歩くこと約20分。

 奇岩をカメラに収めながら走ること4時間。そろそろ岩内です。時間はちょうど午後12時を過ぎたところです。昼食にしなければと、道の駅「いわない」に立ち寄りました。近くの食堂で簡単に「ざるそば」で済ませ、途中で休憩場所を見つけては、そこの土地での色んな味を楽しみながら進むことにしました。

 トイレを済ませておこうと、お手洗いを探すのですが見当たりません。道の駅「いわない」のスタッフ?の方に尋ねてみると、100mほど先を指差し、三角の屋根が見えるところですと教えてくれました。道の駅のトイレ休憩をする場所にトイレがないとは…。北海道って…あっそうか…広いからか…。トイレの場所も同じ道の駅「いわない」??

 午後は、夢にまで見たニセコパノラマラインです。道路案内に従って進むと『⇒ニセコパノラマライン』とありました。天気にも恵まれ、胸の高鳴りを抑えつつ、ゆっくりバイクを走らせます。徐々に標高が高くなるにつれ、気持ちよく走れるワインディングロードがどこまでも続いています。

夢にまで見たニセコパノラマラインです。

 途中、原生林の中の湿原で有名な「神仙沼」に立ち寄りました。往復30分の敷かれた木道を歩くと、汗がにじみ出てきます。今年の北海道の夏は、「暑い!!」です。でも、行って良かったと思える、とても素晴らしい場所でした。

 「チセヌプリ」、「ニトヌプリ」、そしてスキーで有名な「ニセコアンヌプリ」と、標高1,000mを超える山々を縫うように走るニセコパノラマラインは、およそ33kmの道程で、その間GS等は全くないので注意が必要です。この日の午後は良く晴れて、途中から見える羊蹄山がとても綺麗でした。

 そんな快適な走行で気分は最高潮です。日のあるうちに、予約していた今夜の宿「ニセコツーリストホーム」を探すことにしました。道沿いに立ててある看板があまりにも小さいので、初めは気付かずに通過してしまいました。左の道沿いには「ニッポンレンタカー」の看板が見えました。あれっ?行き過ぎた!Uターンしてゆっくり行ってみると、ありましたありました。小さな案内看板が…。

 そして、農道?(と言っても、幅員は和歌山の県道の様。)を案内標示に従って進むと、砂利道の奥にありました。広い広い(聞くところでは、5,000坪)とっても広い敷地内(どこからどこまでが敷地内?)に、ひっそりと佇む赤い屋根のライダーハウス。(ホントにライダーハウス?)私のような者には、もったいない立派な宿です。それに、羊蹄山がすぐ近くから見える最高の環境です。ここに決めて良かった。

緑に包まれた最高のロケーション

 ニセコツーリストホームの到着時刻は、午後3時30分でした。チェックインには少し早いので、夕暮れのニセコをバイク散策することにしました。羊蹄山を中心に走る道路は、夏の農作物等の緑に包まれた最高のロケーションで、いつまで走っていても飽きることがありません。

 さわやかな空気とともに天候にも恵まれて、真狩川沿いに立つ「細川たかし記念館」で歌う銅像も楽しく見ることができました。また、ニセコのシンボルの黄色いニセコ大橋から望む羊蹄山が最高でした。

 あっという間に午後5時です。そろそろニセコツーリストホームへのチェックインの時間です。ニセコツーリストホームまでの夕暮れのジャガイモ畑を前に、農道からの羊蹄山の眺望もまた格別です。

 チェックインをして、改めて宿の女将さん?に良い気分にさせられました。とっても明るくて、気持ちの良い心のこもった応対に、バイクツーリングでの旅の疲れが吹っ飛んでしまいます。お部屋は広く、お風呂は大きく、1泊2食付きで格安なうえ、おまけにバイクは、屋根付きの大きなガレージへ。

 それに、女将さん手作りの夕食は、ボリュームたっぷりなうえにとても美味!一緒に泊まられた3人の方々との夕食は、ツーリング談義に花が咲き、注ぎ交わすビールの味もまた格別でした。

 最高のシチュエーションで熟睡できたため、明朝の目覚めもとっても爽やかでした。そしてまた、朝食の美味しかったこと。女将さんのご主人も、これまた美男子で、話し易くて、とっても感じの良い印象を受けました。

本日の走行距離:217.6km
本日の燃料補給:7.1ℓ


2004年7月19日(月)[海の日]晴れのち曇り
 午前8時。さぁ!北海道の道南ツーリング2日目の出発です。予報では函館は夕方から雨模様です。今日は国道5号線を一路、函館に向かいます。

 国道5号線のハイライトは「目名峠」で、長万部を過ぎると、今度は内浦湾沿いの長ーい長ーい直線道路が果てしないほどに続きます。

国道5号線を一路、函館に向かいます。

 駒ヶ岳が正面に見えれば、しばらく進むと大沼公園です。この辺りから天気も徐々に下り坂で、残念ながら駒ヶ岳の素晴らしい眺望は望めませんでした。

 やっぱりツーリングには天候が第一!晴れていないと楽しさも半減してしまいます。仕方なくこのまま函館市に入り、五稜郭公園に行ってみることにしました。

 時間も午前11時40分とお腹が空いてきました。五稜郭に行けば公園内に食堂等があるだろう。そう思い周辺近くで駐車場所を探すのですが、適当な場所が見つかりません。

 何回か同じ場所を周っていると、タクシー乗り場で運転手らしき方が「バイクは、ここに停めたらええよ。」と教えてくれました。ちょうど通行の邪魔にならない場所で、それに公園入口のすぐ近くで、とても良い駐車場所でした。タクシーのおじさんに「ありがとう!」と会釈しながら公園に入りました。

 公園内は非常に広く、暑いうえに空腹ときています。歩く力も失せて食堂ばかりを探しました。中に一つだけあるにはあったのですが、小さな茶店のような…中を覗くと蕎麦や丼物の簡単なメニューが貼られていました。

 もう歩き疲れて他を探す気力もありません。とにかく中に入らせていただき、出された麦茶のうまかったこと!のど越しの良い「ざるそば」を注文し、北海道牛乳を飲みました。もうこれで元気快復です。

 五稜郭公園を出て函館市街に入り、今夜の宿泊予定にしているライダーハウスを探しながら、立待岬へと向かいました。天気は更に悪化しているようで、次第に雲が厚くなってきています。

 森昌子の歌で有名な立待岬ですが、曇り空では、遠くに見えるはずの下北半島はおろか、海と空の境目すら分からないくらいです。いつまでいても晴れる気配などないので、早々と退散しました。

 函館の今夜は雨との予報から、函館山からの夜景は望めそうにありません。それなら今のうちに…と、函館山ロープウェイ乗場へ急ぎました。山上からの眺望は、遠くガスがかかっているようで、はっきりとは見えませんでしたが、でも、登ってきて良かったと思える眺望に出合えました。天気が良ければ、最高の夜景が望めるはずでしたが…誠に残念でなりません。

函館山ロープウェイを利用して函館山へ

 函館山ロープウェイを降りると、時間は午後3時です。そろそろライダーハウスを探さなければなりません。函館市内のライダーハウス「ライムライト」に寄ってみると、誰もいない様子。

 電話を入れると、ご主人は今外出中で、30分以内で帰るとのこと。駐車スペースを確保すべく、ご主人の帰りを待つ間、バイクを玄関前の狭い駐車場所に無理やり一番奥まで入れました。未舗装なうえに車道との段差がきつく、ちょっと一人では大変でした。

 ご主人が戻られてすぐにチェックインを済ませ、すぐ向かいにある銭湯に入りました。ライムライトで入浴券をいただくと370円が350円と20円安く入れます。銭湯で汗を流し、今日一日の出来事を思い起こしながら気持ちの良い泡風呂に入ると、もう最高!って感じです。入浴後、ライムライトのご主人に教えていただいた徒歩10分程の所にある「よろず飯店」へ歩いていきました。

 時間は5時30分と、夕食時間には少し早かったためか、食堂内にはまだお客さんの姿はありませんでした。大小交えてテーブルが5台、カウンターが5席、奥に座敷が何席かあるくらいの極小さなお店ですが、餃子定食のうまかったこと!また、そのボリュームにも圧倒されてしまいます。

 しばらくすると地元の若い方々で、すぐに満席になりました。この味とこのボリュームでこの価格!って感じです。すぐ近くに「たつみ」というラーメン屋さんも、美味くてボリューム満点のラーメンが、たったの250円で食べさせてもらえると聞いていたのですが…もう満腹で…。

 「よろず飯店」から出ると、しとしとと雨が降ってきました。天気予報がまる当たりです。でも、考えようによっては、走行中の雨でなくて良かった。もし、そうであったとしても、もう予定を変更することなどできないのですから…。夜の間に雨が上がることを、ただ祈るだけです。携帯電話からIモードで調べてみると、明日の予報は「曇りのち晴れ」でした。

 ライダーハウス「ライムライト」に戻り、明日の予定を考えていると、午後8時頃だったでしょうか、ひとりの青年が、ずぶ濡れ状態でチェックインしています。道を間違えて遅くなってしまったらしい。

 そして、彼は私の隣の寝床へ…。すぐに向かいの銭湯へ行ってきては、照明を消した暗いところで地図を広げています。「電気を点けていただいていいですよ。」そう言っても、一向に点そうとしません。気を使っている様子を見て、トイレに行くふりで電気を点けてあげました。顔は笑顔に変わりました。

 若い彼とのツーリング談義が進んでいくうちに、色々話してくれました。彼は山口県からで、青森までずっと高速道路を使わずに、テント泊で一週間かけて、今日やっと函館に着いたのだという。

 時間はいくらでもあるのですが…お金が限られているので…とか。仕事を辞めているので、この際「今しか出来ない事をしたい。」との思いからやって来たのだという。すごく素晴らしい事ではないでしょうか。彼の成功をお祈りします。

本日の走行距離:196.2km
本日の燃料補給:10.43ℓ


2004年7月20日(火)曇りのち晴れ
 午前7時、ライムライトのご主人から朝食の用意ができているとのこと。「ええーっ!?」たったの1,000円で朝食までいただけるんですか?な、なんと気の利いたライダーハウスだこと!素泊まりの値段じゃなかったんだ!

 それでは遠慮なくご馳走になります。山口県からの青年も、本当に有難いと喜んでいました。彼はこれから歩いて五稜郭公園に行くとのことですが…往復6kmを徒歩では疲れが残るのでは…と、みんなで話すと、気が変わったのか、じゃ、その辺を散策してきますと言って出かけて行きました。私もすぐに身支度にかかりました。

 午前8時30分、ライムライトを出発です。早い勢いで雲が流れています。天気は急速に快復に向かっている様子。予定では、きじひき高原パノラマ展望台からの駒ヶ岳と大沼の眺望を望む計画でしたが、そこまで天気は快復していないことから、眺望を望むことは断念し、大沼公園へと直行しました。

函館市内のライダーハウス「ライムライト」に寄ってみる

 国道5号線の函館新道を通る途中に小雨がぱらつきましたが、どうにかレインウェアを着るほどでもなく、濡れずにすみました。大沼公園到着は午前10時頃でしたが、この頃には所々に青空が見え始め、大沼公園周遊の道路を気持ち良く走れました。

 午後には羊蹄山の周辺も晴れるとの予報だったので、これからもう一度、国道5号線をニセコ経由で喜茂別町を通り、羊蹄山の眺望が素晴らしいと聞く「オロフレ峠」を越えて、本日宿泊予定の白老町内のライダーハウスを目指すことにしました。

 途中の目名峠を越えてしばらく走ると、澄んだ青空をバックにくっきりと、きれいな姿の羊蹄山が見えてきました。

 ニセコを過ぎて、喜茂別町から国道276号線に入ると、今度は背後に羊蹄山が見えます。真っ直ぐに伸びる道の向こうに見える羊蹄山もとてもきれいです。

 ここからは国道276号線の道路案内標示に従い、広島峠を越えて国道453号線に入り、オロフレ峠を目指します。北海道は、三桁国道でも良く整備されているので非常に走り易く、周囲は広くて、どこもパノラマの世界だから、本当にどこを走っても楽しくない道路なんてありません。

 道路案内標示に「オロフレ峠」とありました。下界の天気は晴れて暑いくらいだったのですが、標高が上がるにつれて天候が激しく変化し、前が見えないほどの濃霧に遭遇しました。途中で引き返そうとも思いましたが、そのうち晴れるだろうと、高をくくって進んでしまったのが間違いでした。

 行けども行けども濃霧は激しさを増すばかりで、対向車も来ないため薄気味悪くなりました。こんな山奥で何かのアクシデントに遭えば大変なことになる。

 そう思いながら、およそ2時間は走っただろうか。いいえ…視界の遮られた濃霧の中では、走るというほどのスピードは出せません。約15~20km/h程度のスピードで走っても、怖いくらいです。

 道路側線の白いラインを頼りに、生きて帰ることだけを考えてゆっくりバイクを進めると、どうにか明るさが見えてきました。登別温泉の案内標示が有り、対向車にも何台か行き交うようになり、ホッとしました。もう疲れは限界にきています。

 ふとバイクの時計に目をやると、もう午後4時15分です。そろそろ白老町で予定しているライダーハウス「呉竹荘」を探さなければなりません。国道36号線に出て燃料を補給し、探すこと30分。国道から少し入ったところに「呉竹荘」とありました。

 ここは元々民宿を営んでおり、ライダーハウスは別棟で経営していたらしいのですが、都合で、今では民宿をやめてライダーハウスだけにしたとのことです。そんなわけで、中は民宿そのもので、温泉まで完備されています。

 私のあとに2人のライダーがチェックインをしていました。バイクは「スズキ刀750」と「カワサキゼファー550」でした。ゼファーで来られた方は、パソコンを携行し、ご自身のホームページの更新を行いながらツーリングしているとか…。

 この方のおっしゃるには、「最近増えましたよ…」って言っておられましたが、私の年代では、「凄い!」としか思いません。とにかく凄い人に遭いました。

 私だけが「呉竹荘」での夕食をいただくことになっており、午後7時から1階の食堂で焼魚定食を注文しました。焼魚は、生姜の自家製タレをつけて焼き上げた尾頭付きの大きな「ヒラメ」で、ビールの肴にすると、もう最高の味でした。ヒラメで舌鼓を打ったので、本当に舌が回らなくなるほどでした。

 その後、2階の客室でしばらくの間、北海道ツーリングの話題で会話が弾みましたが、疲れからか睡魔が襲ってきたので、明朝早く出発することを理由に午後10時には着床しました。

本日の走行距離:338.6km
本日の燃料補給:21.85ℓ


2004年7月21日(水)晴れ
 午前5時起床。チェーンルーブを注すために外に出ると、凄い霧です。昨日のオロフレ峠の恐怖を思い出してしまいました。天気予報では、室蘭、倶知安方面は、晴れです。昔からよく「早朝に霧がかかると、その日は晴れる。」と言うじゃありませんか。

 今日の予定コースは室蘭市から地球岬に立ち寄り、その後は昭和新山、有珠山へのロープウェイと洞爺湖周辺を観光し、中山峠から定山渓温泉に行って、再度ニセコツーリストホームに泊まる計画です。

 午前6時30分に呉竹荘を出発し、霧の国道36号線を室蘭方面に向かいます。そして、途中のコンビニで朝食を摂りました。朝食を食べている間にも、霧は急速に晴れ渡り、空一面に青空が広がりました。今日もこのライダー姿では、暑い一日となりそうです。

 国道36号線を西に向かうと、途中から拡幅された広い道路となり、しばらく進むと国道37号線となって「地球岬」の案内標示が出ていました。

何だか寂しい「地球岬」でした

 午前7時30分の平日早朝に訪れたためか、そこにはまだ誰も見えていませんでした。何だか寂しい「地球岬」でしたが、空の青と海の青がとても綺麗で、その名のとおり水平線が丸く見えました。

 祝津公園で休憩した後、白鳥大橋を渡って室蘭港を一跨ぎし、今度は国道37号線で伊達市を過ぎて、国道453号線から道道703号線に移り昭和新山へと向かいます。

 昭和新山前には大駐車場がありますが、管理費用としてバイクも100円徴収されます。昭和新山到着は午前9時ちょうどでしたが、平日とあってか、まだ人出はまばらです。

 早速ロープウェイを利用して、有珠山山頂へと登ることにしました。ロープウェイからの眺望は、遠くで少しガスがかかったような様子でしたが、天候に恵まれて、気持ちの良い眺めを味わうことができました。山頂から見る昭和新山は、今でも白い煙を吹き上げており、あれが突然隆起してきたのかと思うと、生きている地球の火山活動の凄まじさに想像を絶するものを感じます。

 火山活動の凄まじさを知った昭和新山を後にして、今度は洞爺湖の全貌を見渡せるという「サイロ展望台」へと向かいます。洞爺湖沿いの道道2号線から国道230号線に入り、しばらく進むと「サイロ展望台」の案内標示が見えます。洞爺湖と中島、遠く向こう岸には有珠山がパノラマの眺望です。国道230号線で、長閑な留寿都の田園地帯の風景を眺めながら、爽快な走りを愉しみます。

 そして、今日の道のハイライトは、「中山峠」です。この国道230号線は、北檜山町から札幌市まで延びていて、中山峠は、周辺の無意根山、喜茂別岳、札幌岳、空沼岳、漁岳等の海抜1,200~1,400mを越える山々を縫って走る爽快なワインディングロードです。この日も天候に恵まれて、最高の走りを愉しむことができました。

 定山渓へも行ってみましたが、「定山渓」とは渓谷なのか、単なる温泉地の名前なのか?どこがどこだか分からないままに、さっぽろ湖まで来てしまいました。

 このまま進めば小樽まで行ってしまうので、Uターンして再度「中山峠」の走りを愉しんだ後、国道276号線から名水100選の「羊蹄ふきだし湧水」で有名な噴出公園に立ち寄りました。

 「羊蹄ふきだし湧水」は、羊蹄山に降り注いだ雨や雪解け水が、およそ30年かけて地下水となり、年中6.5℃前後の大量の水が豪快に湧き出しています。

羊蹄山に降り注いだ雨や雪解け水

 楽しい時間はあっという間に過ぎてゆき、今日も、もう午後3時30分を過ぎました。今日で道内最後の宿泊です。最後はやっぱりお気に入りの「ニセコツーリストホーム」です。なぜなら、今回のツーリングは、蝦夷富士とも呼ばれる「羊蹄山」を撮影するのが目的だからです。是が非でもこれを達成して帰るためには、天候が一番問題視され、それが全てを左右することから、その日の天候に合わせて、ニセコを中心に行動できる宿泊計画を組む必要があったのです。道内で5日間あれば、その内少なくとも1日は晴れる日があるだろうと…。

 その目的は、もう既に達成されているので、気分は最高です。今回のツーリングも、もう何も思い残すことはありません。あとはゆっくりとニセコだけにしかない風景をカメラに収めて帰るだけです。「天の神様…今年の夏もたくさんの恵みの青空をお与え下さり、ありがとうございました。」そう天の神様に感謝しながら、ニセコツーリストホームへと向かいました。

 道内での宿泊の最後の夜です。この夜は、平日とあってか泊り客は私一人の様子。何だか寂しい。夕食は、ニセコツーリストホームのご主人と女将さんのご夫妻と一緒にいただきながら、道内での4日間のツーリングの出来事を聞いていただきました。

 函館での夜の雨で、夜景が見られず残念だった事。他はまずまず天候に恵まれて、ニセコパノラマラインの快適なワインディングロード。そこで立ち寄った原生のままの神仙沼。羊蹄山の優美な姿。大自然の怖さを実感した濃霧のオロフレ峠。火山活動の凄まじさを知った昭和新山。どれもこれも最高の思い出となりました。

本日の走行距離:270.5km
本日の燃料補給:7.1ℓ


2004年7月22日(木)晴れ
 ニセコツーリストホームのご主人と女将さん、二日間の宿泊、どうもありがとうございました。今夜の午後11時30分出港のフェリーで復路の途につかなければなりません。あっという間の5日間でした。

 優美な羊蹄山を望む素晴らしい環境のライダーハウス「ニセコツーリストホーム」が、私たちライダーがいつまでも利用させていただけるよう、御健勝と御繁栄を衷心より御祈念申し上げて、お別れいたします。みなさんもニセコに来られたときは、「ニセコツーリストホーム」を利用してみてください。泊まると絶対に得した気分になれるはずです。

※ ニセコツーリストホームは、現在、次のとおり営業を終了しています。

 フェリーが小樽港を出港する今夜の11時30分までをどう過ごすか考えましたが、見知らぬ町の夜の走行は、危険と隣り合わせのために避けなければなりません。そうなると、やはり早い目にフェリーターミナルに着き、バイクを停めてからその周辺で過ごすことになります。

 これからは一路、未だ見ぬ「支笏湖」を目指します。途中、広島峠、美笛峠を越える爽快な走りが楽しめるのです。これがバイクツーリングの楽しみの一つでもあるのです。

未だ見ぬ「支笏湖」を目指します。

 美笛峠を越えてしばらく走ると、国道沿いの森の向こうに微かに湖面が見えてきますが、走れども走れども、支笏湖全体を眺めることのできる場所がありません。

 支笏湖は、道路沿いからは湖面を見ることができないのかなぁ…。そんなことを思いながら進むと三叉路に突き当たりました。

 札幌方面へ左方向に国道453号線へと出ました。森に囲まれた場所を少し走り、パッと開けたかと思うと、樽前山をバックに広がる大きな湖面が現れます。支笏湖は、大きくとてもきれいで静かな湖です。

支笏湖は、大きくとてもきれいで静かな湖です。

 支笏湖を過ぎた頃に、急に空腹感を感じました。やっぱり私の腹時計は正確です。時間は午前11時50分。国道453号線沿いのコンビニで昼食休憩としました。

 ここからは、札幌市内に入り中心部は車の渋滞が予想されます。ゆっくり休憩を摂って、アクシデントに遭わないようにしなければ…。事故に遭わないことを願いつつ走っていると、大通公園まで来てしまいました。

 車は大渋滞で動きません。しばらくここで休憩です。大通公園では今「さっぽろ夏まつり」が催され、たくさんの人出で賑わっていました。ジャガイモが美味かった。大通公園で休憩中、ふと思いつきました。初日に寄るはずだった「毛無峠」を、天気が悪くて断念していたのです。今からなら充分間に合う時間です。天気は上々、今回の北海道ツーリング最後のツーリングポイントです。思い出して良かった!ジャガイモを頬張りながら、自分で自分に褒めてやりました。

 最後にひとつ楽しみを残しておくのも良いものです。走り収めというか…。さぁ!毛無峠を目指して出発だ!札幌市内の国道5号線は、車の流れもスムーズな広くて走りやすい道路です。

 毛無峠は北海道に似つかないほど小さいコーナーが続く峠道です。最上に設けられた展望所からは、小樽市内から銭函方面まで一望できます。今日も天候に恵まれたことで、この最後のポイントを逃すことなく愉しむことができました。本当に天の神様には感謝、感謝の連続です。

小さいコーナーが続く峠道です。

 最後の思い出のポイントをカメラに収めて、小樽市内で燃料を満タンにし、小樽運河に立ち寄ってからフェリーターミナルへ到着です。これで道内でのツーリングは全て終了しました。

 バイクを指定の場所に停め、フェリー内での食料を買い込むために、近くのコンビニへ歩いて行きました。そしてまた、ターミナル内の待合所のテレビで乗船時間を待ちました。ふと窓の外を見ると綺麗な夕日の沈むのが見えています。早速外に出て、湾内に沈み行く夕日と夕景をカメラに収めました。

 そうこうしているうちに、湾の向こうから午後8時30分着のフェリーが入ってきました。その大きな雄姿と、美しく煌びやかに飾られた夜の照明は、船独特のロマンチックな光景です。どのように入港し着港させるのかがとても興味深く、最後まで見入っていました。

船独特のロマンチックな光景です。

 帰りは、今着いたこのフェリーに乗って帰るのかと思うと、まだ旅の楽しみが残っていることに、バイクに乗ることとはまた違う喜びを感じました。午後10時15分、私のバイクが一番の乗船です。帰りの船内は比較的空いていて、2等寝台の、私の上の寝台は空席です。同じ部屋もいくつかの空席がありました。今日もすぐに入浴を済ませて、午後11時過ぎに着床しました。

本日の走行距離:303.6km
本日の燃料補給:19.32ℓ


2004年7月23日(金)晴れ
 コンビニで買い込んできた麺類で、とっても格安ツアーに早変わりです。滅多に食べることのないインスタント食品は、たまに食べると凄く美味しく感じるのはなぜ?昼食にはUFOと缶ビールです。これがまた良く合うのはなぜでしょう。

 空席の目立つ船内は、どこのテーブルも空いています。軽食喫茶のテレビを独り占めの状態で、ゆっくり観させていただきました。午前9時には、朝風呂を楽しみ、午前10時には、間近を対向する北行きのフェリーにシャッターを切り、午後2時からは、大スクリーンでビデオ映画を楽しみ、ゆっくりと過ぎてゆく時間の中で、思い出のシーンの数々を思い起こしているうちに、フェリーの外の水平線に落日が見えます。

間近を対向する北行きのフェリーにシャッターを切る。

 夕食のチキンラーメンを味わっているうちに、フェリーは舞鶴港に入港です。着衣の準備を整えて下船の支度をし、船内放送に従いバイクを載せた1階に下りると、もう汗びっしょりです。またこの蒸し暑さの厳しい場所に帰って来たんだなぁ…と、早く帰りたいような、このまま帰りたくないような複雑な気持ちになりました。

 下船と同時に、舞鶴若狭自動車道の舞鶴東ICを目指して、夜の舞鶴の街を走り抜けました。舞鶴東ICでは、岡山ナンバーの今下船したバイクが3台入りました。しばらく一緒に流しましたが、あまりにもゆっくりなので、横を抜いていくと、今度はついてくるではありませんか。しかし、彼らは知らぬ間に消えていました。たぶん、山陽自動車道に向かったのでしょう。

 西宮名塩SAでは、最後の休憩と給油をするため停車していると、奈良のV‐MAXのお兄さんから話しかけられました。同じフェリーで舞鶴港に着いて自宅に帰るところだとのこと。道内でのツーリング談義をしたかったのですが、そんなにゆっくりもしていられないので、二言三言交わしては無事を祈って別れました。

 吹田ICから近畿自動車道へ入ると、急に車が多くなり、横をすり抜ける羽目に合うほどの渋滞にまでなりました。余計に暑さを感じます。「早くどうにかしてーッ!」って感じです。堺を過ぎる頃には車も空き、ここまでくれば、もう和歌山まで一気の走りです。午後11時45分、無事自宅に到着です。これで今年の夏の北海道ツーリング(道南編)は、全て終了です。

 最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。深く御礼申し上げます。

本日の走行距離:231.0km
本日の燃料補給:6.3ℓ
総走行距離:1,784.0km
総燃料補給:95.72ℓ

このブログの人気の投稿

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)

東北地方車中泊の旅2024

香住カニかに2025